Adobe CCが必要な人
コストを受け入れてでもAdobe CCを契約した方が良いと言えるのは、次のような特徴に当てはまる人たちです。
(1)これからデザインについて本格的に学びたい人
デザインに関する書籍や解説サイトは色々ありますが、その多くがフォトショやイラレの使用を前提としています。
たとえば、『Illustrator & Photoshop デザインの作り方 アイデア図鑑(SBクリエイティブ 著:楠田 諭史/上司ニシグチ)』という本は、そのタイトルの通りフォトショやイラレを使ったデザインが多数掲載されている本です。
そしてこの本は、単なるフォトショやイラレの操作解説本ではなく、実践的でハイレベルなデザインに仕上げるためのヒントがたくさん盛り込まれています。(筆者もだいぶお世話になった本です)
デザインツールにフォトショやイラレを選択しておくと、こういったデザインに関する本も参考にすることができます。
一方、他のデザインソフトでこの手の本を参考にしようと思っても、手順が大きく異なったり必要な機能が備わっていなかったりすることがあるため、本や記事を読んでも手詰まりになってしまう可能性が高くなってしまいます。
そうなると、デザインに必要なスキルが身につきづらくなってしまうと言えますよね。
また、フォトショやイラレはメジャーなソフトなので、操作でわからないことがあっても調べればすぐに答えが見つかります。
一方、マイナーなソフトは情報量が少なく、問題解決に時間を取られてしまうことも多いので、学習の効率がガクッと下がってしまいます。
これから一からデザインについて学ぼうとしている場合、デザインソフトはフォトショ&イラレを選択しておいた方が間違いないと断言できます。
(2)企業に就職・転職することが目的の人
企業で採用されているデザインソフトは、ほぼ100%Adobe製(フォトショ&イラレ)と言っても過言ではありません。
なので、企業がデザイナー職を募集する際、フォトショ・イラレを扱えることを前提条件(応募資格)としているケースが非常に多いです。
昨今、フォトショ・イラレに引けを取らない高機能なデザインツールも誕生していますが、フォトショ・イラレ以外のデザインツールに詳しくなっても、残念ながら就職時にはあまり役に立たないのが正直なところです。
ただし、デザイナー専門職ではなく広報担当というポジションであれば、Canvaなどを活用しているケースも多く、そういったツールのスキルが役に立つことはあり得ると思います。
(3)縦書きを取り入れたデザインをしたい人
Adobe製以外にも優秀なデザインソフトはあるのですが、それらが日本で中々広まらない理由として、『縦書きに対応していない』ということがあげられます。
筆者はAffinity Designerを使用しているのですが、2023年2月現在、縦書きには対応しておらず、やはりその点は不便さを感じます。
縦書き非対応のソフトでも、ゴリ押しで縦書きの表現ができないわけではないですが、効率や利便性はかなり低下してしまうのが正直なところです。
縦書きを取り入れたデザイン制作を快適に行いたい場合は、フォトショ・イラレが必要と言えるでしょう。
(4)印刷業界で活動したい人
個人で楽しむ用として何か印刷物をデザインしたいということであれば、PDFなどのファイルで書き出して入稿すれば良いのですが、ビジネスではIllustrator形式のファイル(.ai)の納品を求められるケースが非常に多いです。
そして、基本的に.ai形式のファイルはイラレでしか書き出すことができないので、必然的に、ビジネス目的で印刷物をデザインしたい場合はイラレが必須ということになります。
※(Adobeは.ai形式のファイルの仕様を公開していないため、他のデザインソフトから自由に.aiに書き出したり、変換したりということが難しいという事情があります。)
また、名刺やチラシ、パンフレットなどの印刷物デザインでは縦書きを使いたい場面も多いので、なおさらイラレの方が良いと言えるでしょう。
ただし、toB(対企業)ではなく、toC(対個人)の場合は、印刷会社に入稿可能なデータ(PDFなど)で正常に印刷することができればそれで良いケースも多く、必ずしもIllustrator形式のファイルによる納品が求められるわけではありません。
POINT!
- ・これから本格的にデザインについて学びたい人はフォトショ&イラレがおすすめ!
- ・就職や転職に役立てたい場合も、まずAdobe製のソフトを扱えるようになっておこう!
- ・印刷物のデザインに関わりたい場合、イラレはほぼ必須になると言える!
Adobe CCを解約しても良い人
Adobe CCを解約しても良い人は、Adobe CCが必要な人の逆の特徴を持つ人ということになります。
具体的にどういう人なら解約しても良いと言えるか、見ていきましょう。
(1)既にフォトショやイラレのスキルを身につけた人
フォトショやイラレといったデザインソフトの学習コストは、初めてソフトに触れる時が最も高いと言えます。
逆に言えば、一度ある程度フォトショ・イラレを扱える状態になったら、その後他のソフトに移行してフォトショ・イラレを触ることがなくなっても、使い方を忘れてソフトを全く扱えなくなる…ということは考えにくいでしょう。
一度自転車に乗れるようになれば、そのあとしばらく乗ってなくても、乗れなくなることはないのと同じですね。
なので既にスキルを身につけたのであれば、一度Adobe CCから離れて他のソフトを試してみるのも良い選択ではないかと思います。
普段はランニングコストがかからないデザインソフトを使用し、必要があれば再びAdobe CCを一時的に契約して使うようにするという方法もあります。
(2)就職・転職が目的ではない人
フリーランス、副業、趣味など、企業に就職するのが目的ではない場合、デザインソフトはある程度自由に選んでも問題ありません。
フリーランスや副業ならば請け負う仕事を自分で選べますし、Adobe CCのソフトを使わなくても問題ない仕事を請け負うようにすれば、Adobe CCを契約してなくても困らないでしょう。
ただし、Adobe CCのソフトがあった方が、請け負える仕事の幅は広がります。
特に企業を相手にビジネスをしたいと考えている場合は要注意です。
企業ではAdobe製のソフトが使われていることもあり、フォトショやイラレが使える状況であることを前提に依頼してくるケースも多いです。(納品ファイル形式も、.aiなどAdobe製ソフトのファイル形式を求めてくる傾向あり)
フリーランスや副業という立場であっても、対企業をメインにしたいと考えている場合は、Adobe CCを契約しておいた方が良いかもしれません。
(3)Webで使う画像しかデザインしない人
バナーやサムネイル、ブログのアイキャッチ画像など、Webで使用する画像しか作成しない場合は、JPGやPNGなど一般的な画像形式で書き出すことができれば良いので、他のデザインソフトでも困ることはほとんどありません。
また、バナーやサムネイルのデザインにおいては、縦書きを使いたい機会は多くはありません。
縦書きを使いたい機会があったとしても、せいぜいタイトルとかキャッチコピーの部分だけでしょう。
文字数にすると数文字程度なので、文字を分解→縦に並べて配置する…といったゴリ押しをするにしても、そこまで不便さは感じないかと思います。
POINT!
- ・既にAdobeソフトのスキルを身につけていれば、一旦他のソフトに乗り換えるのもアリ!
- ・フリーや副業、趣味として取り組むのであれば、デザインソフトはある程度自由に選べる!
- ・Webで表示する画像のデザインは、Adobeソフトじゃなくても良い場合が多い!
筆者がAdobe CCを解約した理由
筆者はデザイン関係の仕事を始めるにあたり、まずはAdobe製のソフトを扱えるようになることから始めました。
そこからAdobe製品のファンになり、フォトショやイラレをはじめとしたAdobe製のソフトを色々扱っていましたが、現在はAdobe製ではないツールを使っています。
ではなぜ、筆者はAdobe CCを解約するのに至ったのか?その理由を話していこうと思います。
理由1:ランニングコストが高すぎるから
一番の理由はなんといってもこれです。笑
筆者はフリーランスとして活動していますが、毎月6,000円以上の負担が半永久的に続くのは、今後のことを考えるとかなり厳しいという結論に達しました。
学割の料金を利用するとか、裏技的な節約術はあるにしても、決してランニングコストが0円にはなりません。
また、こういったお得な節約術が今後もずっと利用できるかどうかは、全てAdobeの意向次第です。
個人的には、いつ値上げされたり、仕組みが変わって利用できなくなったりしてもおかしくはないと思っています。
要らぬ心配かもしれませんが、万が一、そういった事態になってから慌てたくはないなぁと思ったので、お得な節約術を使ってでも使い続けるのではなく、解約するという選択に至りました。
理由2:有力な代替ソフトが出揃ってきたから
以前は、プロになりたい、プロレベルのデザインがしたい…といった場合は、否が応でもAdobe製のソフトしか選択肢がないような状態でした。
フリーのソフトはもちろん、有料のソフトでも、Adobe製のソフトに比べると機能も使い勝手もだいぶ劣ってしまうという感じだったと思います。
ですが、現在ではAdobe製のソフトに劣らない、高機能なものがたくさん出回るようになりました。
たとえば、デザインツールならAffinityシリーズ、動画編集ならDaVinci Resolveなど、プロが使うツールとしても十分に通用するような、高機能かつ使い勝手の良いソフトが世に出ています。
こういったAdobe製ソフトの代替となるソフトと、それを扱うための情報が広く出回るようになったことで、乗り換えるハードルが低くなり、「Adobe製じゃなくてもそこまで困らないかもな。」と思えました。
そして実際、Adobe CCを解約しても問題なく活動できています。
理由3:新しいツールを試さないのはリスクだと思うから
変化の激しいこの時代、日々新しいツールやサービスが誕生しています。
そんな時代でも、Adobeの立場は簡単には揺るがないでしょうし、Adobe製のソフトを扱えることは立派なスキルであることは確かです。
ですが、かと言って『Adobeにどっぷり浸かりすぎて、Adobe製のソフトの使い方しか知らない』のは、これからの時代はリスクになり得ると僕は思っています。
これからは、その時の環境に応じて、色々なツールを使い分けるスキルが求められるようになるのではないでしょうか?
だとすると、意地でもAdobe CCを契約し続けるのではなく、一度離れて他のツールも使ってみた方が良いのではないかと思って、脱Adobeを決めました。
理由4:デザイン専門というわけではないから
筆者の活動範囲は、プログラミング×デザインの分野(特に最近はプログラミング > デザイン)であり、デザインに特化して活動しているわけではありません。
デザインに特化している場合はフォトショ&イラレが必須と言えるかもしれませんが、それ以外の分野でも活動している筆者にとっては、フォトショ&イラレの必要性はそこまで高くなく、使えなくなってもそんなに困らないことは予想できました。
今となっては、Adobe製のソフトは『あったら便利』ぐらいの印象に変わり、『なくてはならない物』ではなくなりました。
むしろ、デザイン以外のツール…例えばコーディングに関しては、AdobeのDreamweaverよりもVSCodeの方が圧倒的に使いやすいと感じています。
これまでにも既に述べている通り、実際に解約した後も特に困るような事態にはなっていません。
ただ、かと言って今後も全くAdobe製品を使わないと決めたわけでもなく、必要性が出てきたらまた契約すればいいやっていうスタイルでいます。
グラフィックデザインの分野ではイラレ形式のファイルで納品を求められることが多いので、そっち系の仕事をまた増やしたくなったらまたAdobeを契約するかもしれません。
POINT!
- ・解約に至った1番の要因はやっぱりコストの重さ!
- ・これからの時代、いろいろなツールを使えるようになっておいた方が良いかも!
- ・二度と使わないと決別するのではなく、必要があればまた使えば良い!
まとめ
今回の記事の内容を一言でまとめると、次のようなことが言えるかと思います。
- 駆け出しデザイナー、就職目的、デザイン専門職 →Adobe CCが必要
- 上記に当てはまらない →違うツールでもいいかも
Adobeの製品は質が高く、情報も豊富で素晴らしいソフトです。が、使い続けるとコストが重くのしかかかってくるのも事実です。
個人的にAdobeだけを頼るのはリスクが高いと思うので、Adobeのソフトに慣れたら一度他のツールも試してみて、その時に改めてAdobeと比較した上でメインツールを決めるのが良いのではないかと考えています。